相反・相似

――永遠を生きるってのはどんな感じなんだ?
何気ないような問いかけの言葉がどこか深くに、重く、残った。
沈みきれずにそれは、引っかかって不快感を与えて。


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紅葉が舞っていた。
その紅を見たまま目を合わせずに問いかけてきたのは深茶のコートの近衛騎士。
琥珀色の髪色も相俟って、木の下に腰を下ろすその姿は秋の景色に溶けてしまいそうだった。
夏の笑顔を湛えながら、秋の色を身に纏うアンバー・ラルジァリィ。
「そうだね…」
低い声が言葉を紡ぐ。
黒のロングコートと腰より長く美しい銀髪は、一足早い冬景色。
覆うように伸びた前髪の上から左眼に触れて、ディア・ドールは“微笑んだ”。
どんな感情をもって自分がそう考えるのかは解らないけれど。
「……“孤独”、かな」
“人間”と共に生きることを選んだ。
それは何故だったのだろう。
遠い昔の話。
流れゆく時の中でもう何度も何度も何度も。
“大切な”ものを置いてきた気がするのに。
「今存在するこの場所に、取り残されるとでも言うかな」
そう、置いてきた。
そして、置いて逝かれた。
それでもまだ同じ事を繰り返している。
アンバーがディアに視線を向け、見上げるようにして告げた。
「そっか、結局“同じ”なんだな」
その笑顔は何処か頼りなく映る。
先に逝き、記憶の中に取り残されるのが“人間”。
その岐路に恐らく自分が立っているであろうことをアンバーは悟っていた。
何も言わないディアも――“人間”ではない彼も、気づいているだろう。
不安定な体は少し痩せたような気がする。
「――――此処に居る、ことしか出来ないんだ」
呟かれた言葉は風に消えて。
紅葉が舞っていた。
その紅はまるで散り逝く命の色のようで。
ただ、音も無く。

End


「アンバーとディア」というリクエストを頂いて書きました。
簡潔に纏まった、というよりは短くなってしまいました。
本編終盤の辺りをイメージしています。
アンバーをしんみりさせると、どうもお話自体がしんみりしてしまいます。