ローレッツィ家の受難 ~俺たちは、そんなの認めないっ!!~

[ 深飛さんが下さった「RED CROSS」の現代パラレル小説です ]


ここ、ウィルベルグ王国にとある一家がいた。いたって普通だが…、普通じゃない。
長男:エメラルド(23)淡緑色の髪に赤色の瞳。次男:アンバー(23)琥珀色の髪に翡翠色の瞳。三男:パオ(23)黒色の髪に黒色の瞳。
そして、紅一点の長女:サファイア(21)淡青色の髪に深青色の瞳である。
4人ともそれぞれ、全く異なった容姿なのは父親は同一人物でありながら、母親がそれぞれ異なった人物だったから。
巧い(?)具合に上の三人は同じ歳であったが、世間でいう三つ子とはちょっと違う。何せ、誕生日がバラバラなのだから。
しかし異母兄妹にも関わらず、4人はとても仲がよかった。そして、4人の父親は今、新しい女のところにいて4人がいる家には帰ってくることがなかった。
それでも、4人は父を恨むことはせず、悠々自適に仲良く暮らしていた。
そんなある日のこと・・・。
 
「ラルド!アンバー!パオ!あたし、恋人が出来たの!!
ローレッツィ家の紅一点、末娘のサファイアが夕食のときにそんなことを言い出した。
「んなっ!!」
「こ、こ、恋人!?」
「!?」
上から順に、アンバー・エメラルド・パオの反応である。
「うん、そう!こ・い・び・と!何、そんなに驚くの??」
サファイアは兄たちの反応に大袈裟な、とでも言いたそうに恋人を強調して答える。
「当たり前だろ!」
とアンバー。それに続くエメラルド。
「俺たちの大事なサファイアにそんな…」
「恋人だなんて…」
最後はパオである。
「三人にだって、彼女の一人や二人くらいいるでしょ?ルビーとか、エラズル(!?)とか、ジェイドとか…それに、三人に負けないくらい格好いいし、優しいんだから!」
とサファイアが返す。
エラズルと聞いて動揺し、どもりながら
「と、と、とにかく!俺たちは認めないからな!」
と代表したかのようにエメラルドが言うと…
「会ってもいないのに、そんなこと言わないでよ!って、ことで明日、家に遊びに来るから会ってよね!」
「「「家にくるー!!??」」」
「うん、だって、やっぱり三人には紹介しとかないと、でしょ?」
「だ、だからって、急すぎないか!?」
「善は急げ、っていうじゃない☆」
アンバーの問いに笑顔で答えるサファイア。
「…使い方が、違うような…」
パオが突っ込む。
「とにかく!明日来るから、遅くまで寝てないでね!!特にアンバー!!あと、失礼のないようにしてよね!!特にアンバー!!じゃ、あたしはご馳走様~」
そう言って、サファイアは部屋に戻ってしまった。
「…なんで全部、俺なんだよ…」
アンバーがそう言うと、すかさず
「そこは問題じゃない」
「あぁ」
エメラルドの言葉にパオも賛同する。
「問題大有りだ!!」
一人、アンバーが否定するが、所詮、いつものこと。
「さて…どうしたものか…」
「あぁ…」
「俺はどこの馬の骨か、わからないような奴にサファイアを渡すつもりはない」
復活した(?)アンバーがそう言うと
「「もちろんだ!」」
と二人も声を揃えた。
 
翌日…三人はそわそわしながら、その時を待っていた。
「ちょっと!何、そわそわしてるの?落ち着いてよ。恥ずかしいじゃない」
「しかしだな…」
エメラルドがそう答えたとき、インターホンがちょうどよくなった。
「は~い!」
サファイアが我先にと玄関に向かう。
「「「来たっ!!」」」
三人はダイニングテーブルとソファにそれぞれ腰掛けると、その人物がリビングに入ってくるのを今か、今かと待った。
三人にしてみれば、ほんの数秒がとてつもなく長く感じられた。
程なくして、サファイアとサファイアをそそのかした(?)人物が入ってきた。
「ちょっとうるさいのが三人いるんだけどねー」
サファイアの顔はとても嬉しそうだった。やって来た男といえば…銀色の長髪に紅色の瞳をした長身の男。
「初めまして」
その声は、重みのあるバス。
「どうも、初めまして。兄のエメラルドです」
そういって、作り笑顔で右手を差し出すエメラルド。さすがは長男といったところか。
「ディア・ドールです…」
負けじと笑顔で右手を握り返した。
「ディア、座って?」
サファイアが兄・エメラルドの座っているソファと反対のソファに座るように勧める。
そして、自分は飲み物を取りに台所へ。
「・・・・」
「・・・・」
サファイアがいないため、微妙な沈黙が続く。
それを破ったのは…
「俺はアンバー。サファイアの2番目の兄貴。あんた、どこでサファイアのこと引っ掛けたんだ?」
エメラルドもパオも固唾を飲んで、ディアを見る。
そこへ、ちょうどよくサファイアが戻ってきた。ディアにコーヒーを出しながらアンバーに向かって声をかける。
「ちょっと!アンバー!何よ、その言い方!ごめんね、ディア。コーヒーどうぞ」
「いや、構わないよ。コーヒーありがとう。…アンバーさん?」
「なんだ?」
「失礼だが…私は、サファイアを引っ掛けたんではなく、サファイアに引っ掛けられたんだ
「「「えっ!!」」」
ディアの答えに三人は揃って声をあげる。
「「「サファイア!!」」」
「しょうがないじゃない!一目ぼれなんだから!」
「・・・ちなみに歳は…おいくつですか?私は、三男のパオです」
パオが気を取り直したかのように聞く。
歳は…忘れてしまった、ハハハ
「「「忘れた!?」」」
「それって、どういう…」
アンバーが問いかける。
「齢、すでに貴方がたよりは、上だということかな」
「はっ!?」
「んな、ばかな!!」
「…」
上からアンバー、エメラルド、パオである。
「「「断じて、認めないぞ!!サファイア!!」」」
「なんでよ~!!いいじゃない!格好良いし、優しいし、大人だし、なんたってお金あるし!文句ないじゃない!」
金かよ…と四人が心の中で思ったのは、言うまでもない。
「と、と、とにかくだ!!」
「年齢不詳の輩となんて!!」
「交際は認められない!」
それを聞いたサファイアは・・・
「交際認めてくれないんなら…」
「「「認めてくれないんなら?」」」
そして、一瞬ディアを見て
ディアに嫁ぐからいいもん!!
「ホホ。それは大歓迎、極まりないね。サファイア」
ディアは至極、綺麗な笑みでそう言った。
「「「それこそ、そんなの認めないっ!!」」」
「なんでよ~~~!!!」
サファイアの絶叫が木霊した。

End


深飛さんが「風の絆」一周年お祝いに小説を下さいました。
なんとRCパラレル小説…!
笑わせて頂きましたv
サファイア愛(ラヴと読む)な兄3人が非常に可愛いです。
特に、サファイアに問題視されてるアンバーが!
そしてエラズルはモテモテ(死語)なんですね!(笑)
ディアとサファイアという意外なカップルにも驚きました。
楽しい小説をありがとうございました!

2005.07.20