八十日日

「贅沢は言わないよ」
はアンバーの背中に頬を付けた。
自然、口元が緩む。
「ただ、一緒に居られれば良い」
これからも、これまでみたいに。
重ねてきた沢山の日々に、更に日々を重ねて行けたら。
「ねぇ、アンバー」
返事は無い。
ただ、背中が大きく動いた。
「アンバー?」
は傾いだ姿勢を戻し、アンバーを覗きこむ。
項垂れる様に、アンバーは手で顔を覆っていた。
「何で」
零れた言葉は、小さい。
「何で、そんな可愛い事言ってくれるかな」
アンバーはを向く。
顔が赤い。
「そんなんで、良いわけ?」
「何が?」
「そんな、小さな願いだけで」
「此れ以上、私は何を望めば良いの?」
「何でも」
アンバーは小さく笑う。
伸ばされた手が、の髪を撫でた。
「もっと贅沢言って良いんだ。俺は、の我儘なら何だって叶えてあげる」
「充分過ぎる我儘じゃない?」
すっごい殺し文句、と。はアンバーに抱き付く。
「アンバーの人生下さいって言ってる様なもんだよ」
確証の無い未来の、一方的な約束。
アンバーは迷い無く、其れを受け止める。
「俺の人生で良ければ、幾らでも」
殺し文句はお互い様だ。
アンバーはの背に手を回す。
「その代り、の人生は俺が貰うから」
「アンバー以外に、あげるつもりは無いよ」


これからも、これまでみたいに。
重ねてきた沢山の日々に、更に日々を重ねて行く。
二人で。

End


蒼さんより、サイト8周年のお祝いに頂きました!
お前ら結婚しろ!と言いたくなるようなこの甘々っぷり…!
恋人同士の描写というのは自分でさっぱり書いたことがないので、いつも新鮮なのです。
甘いんですが、流れる雰囲気が全体的に爽やかでいいなあ!
現在の彼は子供っぽさだけが目立ってしまうのですが、何年か経ってこんなことが言えるようになったらいい…!
幸せ一杯のお祝い、ありがとうございます!

2012.07.16