なないろ。

アンバーは駈け出していた。
悪い、と。一言残して視界から消える姿は、まさに風。
「はて」
置き去りにされたエメラルドは窓の外を見遣る。
先程迄降っていた雨は、何時の間にか止んでいた。
窓の外を見た途端、アンバーは駆けて行ったのだ。
理由は、直ぐにわかった。


!」
目的の人物を見付けて、アンバーは声を上げた。
「アンバー?どうし」
「一寸来てくれ!」
の言葉を遮り、其の手を引く。
玄関迄の距離ももどかしく、窓から外に飛び出す。
の驚いたような声を聞きながら、アンバーは更に走った。
雨の匂いの残る中庭。
花弁の水滴が煌めく。
アンバーが足を止めたのは、花壇の傍だった。
「何なの、いきなり」
息を切らしたがアンバーを睨む。
アンバーは空を見上げる。
釣られて、も空を見上げた。
日当たりの良い花壇の傍は、空が良く見える。
雨上がりの澄んだ空に、七色の虹。
「わぁ」
思わず、は声を上げた。
「早くしないと、消えちまうかと思ってさ」
アンバーは走って来た理由を告げる。
虹は未だ形を保ってはいたが、それぞれの色が少しずつ混ざり始めていた。
七色が混ざり合い、薄れながら他の色を作って行く。
「あの色」
は虹を指差す。
「アンバーみたい」
「じゃあは、あの色だな」
アンバーも虹を指差す。
空を見上げ、笑い合う。
空に溶ける色を、二人見詰める。


「戻らなきゃね」
暫し見詰めた空から、視線を戻す。
仕事を放り出して来てしまった。
手を繋いで歩きだす。
雨の気配は濡れた草木に残るのみ。
は振り返り、空を見上げた。
二人の色は、もう無かった。
「アンバー」
は隣のアンバーを見る。
「また、見れたら良いね」
「そうだな」
アンバーは笑顔で頷いた。

End


蒼さんより、サイト7周年のお祝いに頂きました!
7の数字になぞらえて、虹のお話…!
仲良しな空気が可愛くて大変もだもだします!爽やかカップル!
微笑ましくなるというか応援したくなるというか…
アンバーに彼女ができたとしても、アンバーとエメラルドはこういう感じだろうなあとか!
色々可能性が広がりました!ありがとうございました!

2011.09.11