―innocence―

何も知らないと思ってる?


「ちょっと、アンバー!!」
声は意外に響いた。
は床に座るアンバーを見下ろす。
「そうじ出来ない」
「別にいいだろ」
アンバーは、笑う。
子供の様な、表情。
「よ…よくないって!!」
そがれかけた怒気を何とか保って。
みとれそうになったのをどうにか隠して。
は叫ぶ。
「邪魔するなら帰って!!」
深い意味は無い。
本気では無い。
いつもと同じ様に。
それなのに。

一瞬だけ。

「そんな事、言うなよ」
背後から、回される腕。
互いの顔は、見えない。
だからこそ余計に。

一瞬だけ。
一瞬だけ見えた。

苦しげな、表情。


でも、気付いてしまったから。


「雨、かぁ…」
窓の外を見て、は一人呟く。
アンバーは居ない。
3日に一度は姿を見せるアンバーなのに。
今も、居ない。
「買い物行かなきゃないのに」
思ったまま、口にする。

少しでも、この現実が紛れるならば。

雨粒が、傘を染める。
雨音が、辺りを埋める。
人通りの無い道に、人影。
見知った姿。

暗い、輝き。
暗い、琥珀の輝き。

「アンバー?!」
「…………?」
どこか呆然とした、鈍い反応。
「どうか、したの?」
今更な気もしたが。
ぬれたアンバーに傘を差し掛ける。
遮られて尚、滴り落ちる雨の残滓。
頬を流れる雫。

泣いている様にさえ。

「無理、しないで」
投げる様に、傘から手を離す。
しがみつく様に、アンバーを抱く。
「私は何も知らないけど…でも、何かあるんだって事はわかってる。話してくれなくても、何も言わなくてもいいから、無理、しないで」
ただ、必死で。
雨音に埋もれそうになる言葉を、想いを。
「私が、居るから……」

雨音の中、微かに。

「……悪い」
肩口に顔を埋めるようにして。
「…も少し…だけ」

せめて、雨が止むまで。

End


蒼さんが書いて下さった、アンバーのドリーム小説です。
な、何か…なんか嬉し恥ずかし!
RCのドリームですよ、ドリーム!
頂いたものをそのまま編集していますので、初期の名前は私(瑠璃)になっております。
どうぞお好みの名前を入力してみて下さい!(恥ずかしいらしい)
RC後半イメージで書いて下さったとのこと。
切ない感じがたまりません…!
ありがとうございました!

2005.04.08